「スポーツ中のケガの応急処置」
  

1.初期治療の重要性
 スポーツには当然ケガはつきものです。緊急を要するものから比較的軽いものまでいろいろありますが、軽いものでも最初の治療を誤ると復帰が思わず長引くこともあります。急を要するものは的確に処置を行わなければなりません。今回はスポーツの現場における応急処置について述べてみたいと思います。

2.頭部・顔面部の外傷
 頭部や顔面部の外傷は、命に関わることもありますので特に注意が必要です。チェックする項目を述べます。
@意識があるかどうか
 ケガをした人とコンタクトできるかどうか確認します。一見意識があるように見えるが、よく話してみるとよくわからないことを言っていたり、自分が誰かわかってなかったりすることがあるので、注意深く観察します。(図1) 受傷時は意識がはっきりしているのに、あとで意識がなくなることもあります。硬膜外出血などを起こしていて、じわじわ頭の中で出血しているときに起こります。


 
 
 
 
 
 

図1 意識があるようでもはっきりしてない  
   ときがあります。けがを負った人が今 
   どこでなにをしているか理解している  
   か確認してください。
    
 
 
 
 
 
 

A麻痺がないか
 手足に麻痺があれば、脳や脊髄の損傷が疑われます。麻痺がないようでも指鼻試験(自分の指を自分の鼻に持っていかせる)閉眼起立、片足立ちなどを行わせ平衡感覚がだいじょうぶか検査します。
B出血がないか
 鼻出血・耳出血があり血に透明な液が混ざっていれば、髄液の流出を疑い頭蓋骨の骨折の可能性があります。眼の回りに内出血があるときは、ものがしっかり見えるか確認します。視力が落ちているときには頭蓋骨の骨折があるときがあります。
C痛み
 激しい頭痛がいつまでも続くときも脳の損傷が疑われます。
D応急処置について
 以上の症状があれば直ちにCT装置があり、脳神経外科の診察ができるところに搬送しなければなりません。搬送できる状態になるまで安静とします。
呼吸や脈拍に異常があれば直ちに救急救命処置を行わなければなりません。(No17雷とスポーツ 救急処置へ)

3.熱・日射病
 非常に暑いところで、スポーツ活動を行っていると起きやすくなります。上昇した体熱を下げるために皮膚や筋肉に血液が増加したため、頭などに血液が回らなくなりふらふらになったり(熱疲労)、汗で体の中の塩分が不足し、このため全身の筋肉がつりやすくなったりします(熱けいれん)。ひどくなるとショック状態となり、適切な処置をしないと死に至ることがあります(熱射病)。 予防が大切で、夏場の運動など大量の汗がでることが予想されれば、あらかじめスポーツドリンクのようなミネラルを含んだ水分を補給しておくこと!! 試合や練習で十分なパフォーマンスを発揮するためにも運動中にこまめに水分や塩分を補給することが必要です。(図2)日射病が疑われたら着衣をゆるめ涼しいところで体を休めて水分を補給させます。もし循環障害や意識障害があれば直ちに適切な治療が必要になり早急に医師に見せなければなりません。(No12熱中症についてへ)
 


 
 
 
 

図2 十分なトレーニングができたり・試合で活躍
   するためには、運動前・運動中・運動後に  
   こまめに水分を補給することが必要です。
   ミネラル(塩分)の補給も忘れずに!
 
 
 
 
 
 
 
 
 

4.首のケガ
 コンタクトスポーツなどで、ひどく頸部を痛めたとき、手や背中の方に激痛が走ることがあると首の神経を痛めている可能性があり、病院で精密検査をする必要があります。

5.胸部・腹部打撲
 胸部の打撲で問題になるのは数カ所で肋骨が骨折すると肺が膨らまなくなり、呼吸困難になることがあります。腹部を打撲した後いつまでも強い痛みが持続するときは、内臓の損傷を疑わなければなりません。

6.出血
 受傷部から血が出ているとあせってしまうものです。創部をよく観察し、適切な処置を行います。
@創部が土などでひどく汚れているときは、きれいな水などで軽く洗いその後消毒します。
A出血がひどいときは清潔なガーゼで、創部を圧迫します(図3)。かなり出血しているときでも4,5分圧迫していれば、大部分の出血は止まります。
 

図3 まずは必ず圧迫止血法で
B圧迫していても血がどんどん出てくるようなときは傷の心臓に近い方(上腕・大腿)を布などで縛ります(図4)。縛ったところより末梢は血液がいかなくなるので至急医師に見てもらわなければなりません。

        
図4   圧迫止血法でも出血が止まらない
     場合は、体に近い方を布などで縛る。   
    縛った所から先は血が行かなくなる
    ので注意すること
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

7.骨折・脱臼
 腫れや変形がひどいときは骨折・脱臼を疑います。骨折が疑われるときはそのまま安静にするか、もし固定できるようなものがあったら患部をそっと固定し、専門の医師に診てもらう必要があります。医学的知識がないのに整復操作を行うことは危険です

8.四肢の捻挫・打撲
@RICEが原則
 RICEが原則です(図6.7.8.9)。病院に来る患者を見ると湿布するだけの処置で来院する人が多いようです。末梢が、むくまない程度に包帯などで圧迫してやると後の治りが良くなります。

安冷圧挙 = RICE
R- Rest(安静)
I- Icing(冷却)
C- Compression(圧迫)
E- Elevation(挙上) 

図6  患部を安静にします。病気の程度によって軽く動かして良いものからギプスなどで固定しなければならないこともあります。
 


 
 
 

図7  腫れを防ぐために冷却します(冷却しずぎて凍傷にならないように)。数日経って痛みが引いてくれば逆に暖めていきます。
 


 
 
 
 
 
 
 

図8  腫れを防ぐためには、圧迫が大事だが行ってないことが多い


図9  なるべく心臓より上に上げておいた方が腫れが少ない。特に足のケガは腫れやすいので、数日は挙上しておいた方が早く治る。
 
A医師に見せる目安
 腫れがあるようならレントゲンなどを撮った方がよいでしょう。痛みが強かったり動きが悪かったり力が入らなかったりすればやはり精密検査が必要になると思いますので早めに医師の診察を受けましょう。
 

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