「足、特にかかと”の障害、
        外傷について」
 
 今回は、足、その中でも、特にかかとのまわりの痛みについて述べてみましょう。
まず、かかとの骨を踵骨(しょうこつ)と呼びます。そして、そこには図1で示した様に、ふくらはぎの筋肉である下腿三頭筋(ひふく筋とヒラメ筋)の末端の部分である人間の身体の中で一番太い腱のアキレス腱が、また、足の裏の「土踏まず」を補強している足底筋膜(そくていきんまく)という厚い膜が付いています。また、成長期の子供には骨端軟骨(こったんなんこつ)という、骨が成長して大きくなっていく為に大事な軟骨があります。 これらのことを頭に入れて次に進みます。
 
1.アキレス腱断裂(けんだんれつ)
 ママさんバレー、ソフトボール、テニスに多く、踏み込んだ時に、自分はボールを追いかけているのに、後ろからパーンとボールを当てられたような音を感じ、又は後ろからいきなり誰かに蹴られた様な感じを受け、足首を動かすことは出来るがつま先立ち、ジャンプが出来なくなります。勿論腫れと痛みは有ります。小児には起こりません。
 こうなったら、最低でもギプスで固定されることは我慢しなければなりません。手術になることの方が多い、と考えましょう。ギプスだけだと再断裂の危険性も多くなります。スポーツへの復帰は3~6ヶ月後と考えましょう。
 予防はふくらはぎのストレッチングにつきます。
 
図1 かかと周辺の解剖
2.アキレス腱周囲炎(しゅういえん)
 これはかかとから5cmくらい上の所でアキレス腱が腫れ、痛みを感じます。ランニング、ジャンプ(バレー、バスケット、体操など)競技に多く発生し、最初は、運動の始めに痛く、途中(暖まると)痛みは軽くなり、運動の終わったあと又痛くなるという状態が続きます。慢性化し易いので、まず2週間の安静とふくらはぎの充分なストレッチングを必要とします。このストレッチングは、勿論、予防にもなります。(図2)
図2  アキレス腱のストレッチ 最低20秒ぐらいじっくり延ばす。 これを2,3回繰り返す
3.アキレス腱包炎(けんほうえん)
 アキレス腱の付いている処からほんのちょっと上に腫れが有り、両横から押さえると痛い。これは、靴の腰革(こしかわ)という、かかとに当たる部分 が堅すぎる場合に多くみられます。踵骨(しょうこつ)とアキレス腱の間には、滑液包(かつえきほう)というクッションの役目をする袋があるのですが、その圧迫が強すぎる場合に生じるのです。スキー、登山、ランニングなどに多くみられます。これは靴を腰革が柔らかいものに変えるしかありません。
 
4.踵骨骨端症(しょうこつこったんしょう)

 8歳~12歳の男の子に多く、骨端軟骨(こったんなんこつ)を押さえると痛い、かかとをついて歩けないといった症状があったら、これはレントゲンで確かめなくてはいけません。骨端核(こったんかく)(骨端軟骨の外側の部分)が硬くなったり平らに薄くなったり、分裂していることがあります。痛みで足をついて歩ける状態でなければ松葉杖を使い体重をかけないようにするか、かかとを削った靴をはいて痛みの治まるのを待ちます。

 原因は骨端部にアキレス腱による牽引力がかかり、炎症が起こるためと考えられています。
このため予防は十分なストレッチおよび運動の軽減、特に反復する動作の繰り返し(たとえばダッシュを繰り返す、縄跳び、長距離走など)を避けることです。
 
5.足底筋膜炎(そくていきんまくえん)
 長距離ランナーが、着地するときに足の裏、かかとを痛がったら、これを考えます。足底筋膜は最初に述べたように、土踏まずを補強し、着地時の衝撃を吸収する役目があります。足のスポーツ障害の場合、どんなときにも言える事ですが、靴は前の部分が柔らかく柔軟性の有るものが適しています。又、ふくらはぎのストレッチと共に、この場合は、親指、足指をそらす足底のストレッチが予防にも治療にもなります。(図3)
 
 

図3 足底のストレッチ    第1〜第3足指を十分背屈させる。   20〜30秒を1セットとして最低3〜5 回行う。
6.有痛性外脛(ゆうつうせいがいけいこつ)
 これは「かかと」ではありませんが、マラソン大会とか、運動会が近づいてくると足の内側の所を痛がる子が増えてきます。舟状骨(しゅうじょうこつ)といって、舟のような形をした骨の舳先(へさき)の部分にポツンと離れた小さめの骨が見られることがあります。この骨を外脛骨(がいけいこつ)と呼んでいますが走ることが多すぎるとここが痛くなり、これを有痛(ゆうつう)性外脛骨(がいけいこつ)といいます。これは、扁平足(へんぺいそく)を伴っている事が多く、それらが重なって痛みを生じているものと思われます。
図4 有痛性外脛骨
  7.有痛性三角骨(ゆうつうせいさんかくこつ)
これも「かかと」そのものではありませんが、「かかと」のまわりの痛みとして述べてみます。
ランニング中、着地するとき、特に下り坂でかかとのすぐ上のあたりが痛くなります。又親指が反った状態の時に痛みを感じます。これは「踵骨」の上に位置する距骨(きょこつ)の後ろの部分、距骨後方突起の疲労骨折か三角骨が脛骨と踵骨との間に挟まれて痛みを生ずるものです。サッカー、バスケット、バレー、マラソンをはじめとして多くの競技に見られますが、はっきりした疲労骨折であればギプスを3〜4週間巻いて固定する事もありますが、たいていは有痛性三角骨では局所の安静と理学療法で軽快します。予防としては、足首を極端に伸ばさない事ですが、これは、実際問題としてスポーツをしていて不可能と思われます。
 
おわりに
かかとだけをみても、ざっとこれだけの病気があります。かかとの障害は、足の形そのものの変形によるもの、靴が合っていないために生じるもの、等があります。足の変形に対しては、インソールといって、靴の底に敷くものを工夫すると可成り改善されます。又、靴そのものも、前足部が柔らかく充分曲がりやすいもので、ヒールの部分が柔らかく、かかとにかかる衝撃を吸収しやすいものを選べば障害も減ってきます結論として、かかとの部分の障害の予防は、ふくらはぎの充分なストレッチにつきます。(No13もう一度ストレッチについて参照)

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